生前贈与が有効なケースと注意点
生前贈与とは、文字通り生きている前に自分の財産を誰かに贈与することです。一般的な贈与契約(民549条)と同じです。
すなわち、贈与者である被相続人が財産を受贈者に与え、そのことを受贈者が受諾することで有効な生前贈与がなされます。
この生前贈与が有効なケースとしては、例えば孫に財産を相続させたい場合が挙げられます。本来、孫は民法上必ずしも相続人の地位にあるものとして認められていません。孫が法定相続人として認められるのは、相続時点で被相続人の子がすでに死亡していたり、子が相続人としての欠格事由(民法891条参照)に該当していたり、相続人から廃除されている際に、被相続人の直系の場合にのみになります(民法887条2項)。
要するに、遺言がなく、法定相続に基づき相続が行われる場合には孫に遺産相続がなされることはごく限られた場合になるということがわかります。
また、遺言書を残している場合にも、その遺言書に不備があると無効となることが多いです。この場合、法定相続に則って行われますので、遺言書に孫に遺産を相続する旨を書いたからといって必ず遺産が孫にも相続されるとは限らないわけです。
これに対して生前贈与はすでに贈与契約として孫に財産を贈与するわけですから、被相続人の意に忠実に財産を移転させることができるわけです。
ただし、生前贈与にも注意すべきポイントがあります。
第一に、高価な財産(110万円以上の財産)の贈与の場合は贈与税がかかります。これは金銭的な注意点になります。
第二に、他の相続人の遺留分に侵害すると、侵害分の金銭を払わなければならないことがあります。遺留分とは、相続において兄弟姉妹以外の親族(子や親)が有する最低限の取り分を確保するための民法上の制度です(民法1042条1項参照)。遺留分を算定するための財産の価格は、被相続人が相続開始の時点で有していた財産と贈与した財産から被相続人が有していた債務を控除した額で決まります(民1043条1項)。
もちろん、上記の贈与した財産はすべての贈与した財産というわけではなく相続開始前の1年間になされた贈与に限られます(民1044条1項本文)。つまり、被相続人が死亡前の1年にした贈与契約で贈与した財産は遺留分の価格に参入され、贈与財産が遺留分を侵害するときに、遺留分権利者の遺留分侵害額請求により受贈者は侵害分の金銭を支払わなければならなくなるわけです(民法1046条1項)。
このように、生前贈与にはメリットもあれば注意すべき点もあります。
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